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5GoGo 第9話『名探偵こまち登場!』 [Yes!プリキュア5GoGo!]

この忌まわしい事件を語るには、どこから始めるべきだろうか。
あの日、私達はかれんさんがナッツハウスの開店祝いに持ってきたケーキを
ただみんなで楽しく、美味しく食べようと思っただけだったのに、
あんな事になるなんて思いもしなかった。あの事件はもう済んだ事・・・
苦い出来事を忘れぬよう、戒めとして手記の形で綴ろうと思う。
図らずも私達が濡れ衣を着せてしまった、あのエターナルの男への償いになるのならば・・・
(注:今回の本文でアガサ・クリスティ「アクロイド殺し」のネタバレをする可能性があります)
  
前置きで述べた通り、私達はかれんさんのケーキを楽しむためにナッツハウスに集まった。
この時点でこまちさんが妙に推理小説に夢中になっていた事を警戒すべきだったと悔やまれる。
そうすれば、せめてあの惨劇は防げたかもしれない。
ともかくみんなが揃ったので、私は喜び勇んでケーキの箱を開けた。
箱の中にはセレブ堂の季節限定、イチゴのスペシャルケーキが収まっていた。
さすがは坂本さんだ。この日のために、わざわざ神戸から取り寄せてくれたらしい。
斜に構えていたシロップも、生唾を飲み込むのが解る。彼も案外正直だ。
私は早速、ケーキを切り分ける事にした。私達5人と、ココとナッツ、そしてシロップ。
数学が苦手な私でもそれくらいはわかる。均等に行き渡るように8等分した。
かれんさんはお皿を取りに、こまちさんは紅茶を淹れに、その手伝いにりんちゃんが続いて、
うららは音楽でもかけようとCDを探しに、皆がそれぞれ階下へ向かった。
私はケーキに箱を被せて、うららと一緒に階下へ向かった。
ココもCDラジカセを取りに行き、ナッツは来店したお客さんの対応へ。
面倒臭そうだったシロップも、私とうららに付き合って階下へと向かった。
ケーキはまだ食べられていなかった。
しておかなければならない事がいくつかあったので、私はそれを片付けた。
そして、部屋にはケーキの箱だけが残っていた。誰も注意を払う者は居なかった。

うららが選んだCDを流し、こまちさんが淹れてくれた紅茶を注ぎ、
みんなが揃ったところで、いよいよ待ちに待ったケーキご開帳の時が訪れた。
舌なめずりしながらりんちゃんが、ケーキの箱を持ち上げたその時、衝撃が走った。
そこには何も無かった。そう、何も無かったのだ。
ケーキは忽然と消えていた。
轟く雷鳴を、ナッツハウスに響く私達の悲鳴が掻き消した。

私達は目を疑った。部屋を沈黙が支配する。
店に居たナッツの証言では、外部から入ったものは居ないらしい。
即ち、外部の人間ではない。と言う事は・・・
『みなさん。ごきげんよう!』
それはあまりにも唐突だった。突如、こまちさんが探偵衣装を身に纏って現れたのだ。
『名探偵の衣装。いつか着て見たいと思って、持ち歩いてたの♪』
『そんなモン持ち歩かないで下さい』
りんちゃんが突っ込むのも当然だ。
しかしすっかり名探偵になりきったこまちさんはお構いなしに先を続けた。
『皆さん。今日ここにお集まりいただいたのは、他でもありません』
さっきから集まっている、というかれんさんの当然のツッコミには目もくれず、
みんなが席を外した空白の5分間に犯行が行われたのだと
こまちさんは時系列を整理しながら語り続けた。
『時々こまちがわからなくなるわ・・・』
かれんさんが呆れ気味に漏らすのも当然だ。こまちさんは推理小説の読みすぎだと思う。
『ケーキを食べた犯人は、この中に居ます!』
こまちさんの声が響く。私達の受けた衝撃を物語るように、再び雷鳴が轟いた。

こまちさんは私達一人一人のアリバイを疑いながら、尋問を続けて始めた。
こまちさん本人は、ずっと台所で紅茶を淹れていた。
その時一緒だった筈のりんちゃんは、容疑者から外れるのだろうか・・・?
いや、こまちさんは甘くなかった。途中でりんちゃんがかれんさんに呼ばれ、
台所を外していた事を指摘する。あのままこの部屋に戻って来て、そして・・・?
『犯人は・・・あなた!・・・かも』
あらぬ疑いをかけられたりんちゃんは、苦笑しながら否定した。
あの時はかれんさんとお皿を選んでおり、少し意見の相違があったのだと告白する。
ところがその際、かれんさんは違うお皿を探しに席を立っていたのだ!
もしかして、あのままこの部屋に来て、そして・・・?
ケーキを持ってきたかれんさんであっても、容疑者である事に変わりはない。
『私を疑う前に、みんなのアリバイも聞かせて欲しいわ』
かれんさんがうららに疑いの目を向ける。
『確かに、私は食いしん坊だし、甘いものが大好きだし、イチゴのケーキには目がありませんよ。
 でもみんなの分を一人で食べるなんて、私がそういう人間に見えるんですか?酷い・・・』

くさい芝居だ。だが、私は思わず涙ぐんでしまった。『うららぁ・・・』
うららは私やシロップとずっとCDを探していたと主張し、
そして、途中で私とシロップがいなくなった事を指摘してきた。
『犯人はのぞみさんとシロップの共犯でしょ!?』
うららが私を疑うとは・・・。私は他のCDを探しに行っただけだし、
シロップもメルポを探しに行っただけの事のようだ。
そして疑いをかけられたシロップも、店でココにばったりと出くわしたと証言を始めた。
しかし、こまちさんはシロップに向けた疑惑の目を緩めない。
空を飛べる事を活かし、3階で盗んだケーキを隠して何食わぬ顔で店に戻ったのではないかと、
これは飛べるシロップにしか出来ない完全犯罪だと追求する。
それでもシロップの弁明は続く。メルポを探して店に来た時、ナッツは居なかったと証言。
しかしナッツは間髪入れず、倉庫に在庫を調べに行っていたと反論を始めた。
それを裏付けるように、うららが物を探す音を聞いている。糸はどんどんもつれていくようだ。

ここで少し、もつれた糸をほぐすべく整理して考えてみることにする。
ケーキが置かれていた3階には誰も居なかった。
2階の台所にはこまちさん。リビングにはかれんさんとりんちゃん。
1階店内にはココとシロップ。外にナッツ。私とうららは階段の下でCDを探していた。
こう見ると皆にアリバイがあるようで、一度は一人きりになっている隙が存在する。
だが、探偵を気取っているこまちさんこそ怪しくないだろうか。
本人は否定しているが、こまちさんにも犯行に及ぶ時間はある。
犯行を隠すために探偵の衣装を持ち出した可能性も捨てきれない。
いつしか降り始めた雨のように、私達の心に疑心暗鬼の暗雲が広がっていった。

雨は上がったが空は曇り、私達の疑念も解消されていない。
言い争いは次第にヒートアップし、互いを疑う声が、責める声が徐々に厳しくなっていく。
皆が否定し、自分は違うと主張するだけでなく、他人を疑い始める光景に、
ココは深くため息を付いて口を開いた。
『友達を疑うなんて悲しい事だよ。もうこんな意味の無い醜い争いは終わりにしよう』
そして、私達に目を瞑るよう呼びかけた。ケーキを食べた人は正直に手を上げて欲しい。
ココにだけ正直にいってくれたらそれでいい。
ココの提案に、私もみんなも光明が見えたような気がした。
しかし本心では、私だけでなくみんなも
ココが突然このような発言を切り出した事を不審に思っていたようだ。
誰もココの言うとおりにはしていない。
思い通りにならなかったココが、急に取り乱し始める。皆の疑惑が向けられて、
ずっと一人でCDラジカセを探していたというココのアリバイの弱さが露見した。
『ココさん。犯人はあなたね!』
疑いを向けられ、ココはまるで駄々をこねるポルンのように、ムキになって否定し始めた。
みんなのギスギスした雰囲気に、私はもう、いい加減嫌気がさしてきた。
普段は上級生への敬意を忘れないうららが、疑いの目をこまちさんやかれんさんに向け、
温厚なこまちさんも強い口調で否定するなど、プリキュア解散の危機かもしれない・・・
突然、エターナルの男が現れ、私達が争っている事に目をつけてローズパクトを要求して来た。
その時、エターナルの男の口元についているものを、私は見逃さなかった。

私の指摘に続いて、みんなも「それ」に気がついた。
あの男の口元にはクリームがべったりとついていたのだ。
『これはさっき食べたケーキの・・・』
語るに落ちるとはこの事だろう。自ら犯行をほのめかしたあの男を前に、
私達みんなの殺気がナッツハウスの3階に満ちた。
『私達の大事なケーキを食べたのは、あなただったんですね・・・?』
『どうせ、私達を仲違いさせる事が目的だったんでしょう・・・』
『おかげで、私達がどれだけ嫌な想いをした事か・・・』
『せっかくのセレブ堂のケーキを一人で食べるなんて・・・』
怒りが収まらなかった私も、うららに続いた。
『そう、ちょっとだけならまだしも、全部食べちゃうなんて』
『アンタもずいぶんとセコい事してくれたわね・・・!』
冷や汗をかきながら必死に否定する男を、往生際が悪いとココとナッツが追い詰める。
そして探偵衣装を脱ぎ捨てたこまちさんに続いて、私達は変身した。
『みんな、変身よ!』
『工工エエェェェェェェェ(゚Д゚)ェェェェェエエエ工工!!!?』

私達が変身を終えた時、あの男は姿を消していた。
見ると必死に空を泳いで逃げようとしている。
犯行を自供したからには、潔く裁きを受けるべきだ。
そう信じて疑わなかった私だったが、あの男の言葉を聞いて追撃の手が鈍った。
『これは元気の無いスコルプを励まそうと買ってきたモンブランとロールケーキと・・・』
ケーキの種類が、違う?私がその事実に気付いた時には、既に遅かった。
『あなたが犯人ね!?』
もう誰もミントを止められない。私が引き止める前に、
ミントに促されたレモネードが、逃げるあの男をプリズムチェーンで縛り付けた。
『召し取ったりィ♪』
そして身動きが取れなくなったところを、容赦なくエメラルドソーサーの刃が襲った。
『本当に違うんだってばあああぁぁぁぁ・・・・・・』
私がためらっているうちに、哀れあの男はお星様となった。
『Yes!』私を除いたみんなが、そうとは知らずドスの聞いた声で決めている。

後から知った話だが、この日エターナル本部でお茶を汲んでいたあの男は、
もう一人の眠そうな男(山本さんと言うらしい)が、元気が無いのを励まそうとして、
ケーキの詰め合わせを買ってきたようだ。そして、その際食べたモンブランとロールケーキの
クリームが口元についてしまい、これが冤罪の決め手になってしまった。
ナイトメア時代から戦ってきた相手とはいえ、エターナルのあの男には悪い事をしてしまった。

私はあの男が漏らしたケーキの種類が違っていた事を打ち明けた。
さすがにみんなも、特に犯人と決め付けたこまちさんはバツが悪そうに反省している。
しかし、誰がケーキを食べたのだろうか?真相は再び闇の中へと逆戻りしてしまった。
その時、メルポに手紙が届いたが、明らかに態度がおかしい。手紙を出すのを妙に渋っている。
シロップに促されてようやく出した手紙は、ミルクからのものだった。
手紙には、いつも世話をしている種が芽を出した事、この芽がいつか大きな花を咲かせるように
ココとナッツにも幸せが訪れる事を信じると書かれており、
先ほどまで互いに疑惑の目を向けていた私達には、耳が痛かった。
ところが、封筒に僅かにクリームがついているのを、私は見逃さなかった。
舐めてみると、まさしくセレブ堂のスペシャルケーキの味がした。
そう、犯人はメルポだったのだ。メルポは物を食べたりしないが、隠していたのだ。
私が最初ケーキを切り分ける際、メルポを頭数に入れなかった事を寂しがった。
これが犯行の動機だ。私は胸が痛んだ。
この事件の引き金を引いたきっかけとなってしまった事を悔い、
私はメルポに素直に謝った。悪気があったわけではなかったのだ。
が、このままケーキを出されてしまうと、私は不利な状況に置かれてしまう。
実は、私はみんなより先に、ケーキを少しつまみ食いしていたのだ。

この手記がこんな風に終わるとは思ってもみなかった。妙な事になったものである。
「私とうららに付き合って階下へ向かった。ケーキはまだ食べられていなかった。
 しておかなければならない事がいくつかあったので、私はそれを片付けた」
これは全て事実そのままだ。それでもあの空白の5分間にどういうことが起こったのだろうと
疑問を感じるだろうか。実に慎重な書き方ではないか。
また、私は随所で次のように正直に告白している。
「そう、ちょっとだけならまだしも、全部食べちゃうなんて」
「舐めてみると、まさしくセレブ堂のスペシャルケーキの味がした。」
仮にこれらの文句に下線でも引いておいたらどうだったろう?

私は逃げる事にした。しかし、逃げ切れるものではなかった。
それにしても、こまちさんはよりにもよって、なんでこんなところに
探偵の衣装なんか持ってきたのだろう。それだけがかえすがえすも残念だ。


プリキュア史上稀に見るカオスな一編。
今回の話は名探偵どころか迷探偵ぶりを発揮して暴走するこまち、
互いを疑ったり潔白を訴えたりする描写のコミカルさ、
そしてスコルプさんへの優しい気遣いが裏目に出て濡れ衣を着せられるブンビーさんと、
ブンビーさんをまさに秒殺するレモネードとミントの鬼コンボなどを
理屈抜きで楽しむべきものでしょう。

今回の話が伝えたいものは何なのでしょうか。
温厚かつ控え目な筈のこまちがやたらと人を疑い、
冤罪を擦り付ける先陣を切ってしまう等、ネタでなければ違和感が募るばかりです。
調子に乗って悪乗りしてしまうと良い事にならない、という教訓のようでもあります。
最も、私も悪乗りした文体で綴ってしまいましたが・・・
のぞみがこんな文体で物を書くとは思えませんし(苦笑)。
そして、たかがケーキ一個で5人の結束が脆くも崩れ、
ココとナッツからは王の資質を疑うような発言まで飛び出し、
プリキュア側の登場人物が軒並み反面教師となっているように思えます。

「プリキュアの結束は固く、チームワークは抜群」
スコルプさんは報告書でこのように書いてしまい、アナコンディさんにダメ出しを喰らいました。
しかし、この報告書が今回のプリキュア側への皮肉になっているようで意味深です。
これまでに5人は絶望のどん底に落とされる悪夢を乗り越え、
個々の夢や目標について悩みながら前に進み、ナイトメアとの最終決戦を経て、
一度はココ達との別れを経験する
など、大いに成長してきた筈です。
そんな5人でも、ほんの些細な事であの悪夢の日と同じ状況に陥る事がある、
プリキュアといえども万能ではなく、諍いも疑いもする人間なのだと言いたいのかもしれません。

「肩の力を抜いて、チャンスを待たなきゃ」
スコルプさんを何故か「山本さん」と呼んだりはしましたが、
ブンビーさんがスコルプさんを励ました時の台詞のように肩の力を抜いて、
難しい事を考えず、やはり素で楽しむべき一編だと思います。
さて、次回ではそして遂に青い薔薇の力がその姿を現しますが、
同時に敵組織の中でいつしか育まれた友情と結束の、
はかない結末を予感させるものでもありました。
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