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METライブビューイング『トリスタンとイゾルデ』 [音楽]

 私はオペラも結構好きなのですが、日本で生の公演を観たくとも絶対数が少なく、たまにスケジュールが合ったとしてもかなり高額なので、なかなか機会がありません。そのためDVDか、稀にテレビで放映されるものを観て紛らわせていることが殆どです。
 ところがニューヨーク・メトロポリタンオペラハウス(METと通称されています)で上演したばかりのオペラを字幕付き編集&指揮者や歌手のインタビューを交えて映画館で上演する「METライブビューイング」なるものの存在を知り、東銀座の東劇へ行ってみることにしました。大相撲九州場所の初日とどちらを見るか迷いましたが、久々にワーグナーの毒を味わいたくなり、こちらを選びました。
  
 幸い東銀座まではのんびり漕いでも自転車で30分もあれば辿りつけるので、土俵入りだけ見た後16時過ぎに出発。本日の開演時間は17時で、終演時間は22時過ぎ予定という、正味5時間以上の長丁場のため、念のためサンドイッチなどを準備して向かいました。

 この「正味5時間」という時点でオペラに明るくない方は尻ごみしてしまうかもしれません。確かにオペラは正味3時間程度かかるものが一般的なので長いと言えば長いのですが、ワーグナーがやや特殊なので、こちらには慣れたら手を出せばいいと思います。

 上映10分前くらいに到着したところ、既に8割は埋まっているほどの盛況でした。こんなに長い作品なのに、好きな方は結構いらっしゃるようです。しばらくは松竹らしく歌舞伎の予告編などが流れています。そのうちMETの開演前の客席風景が映し出され、実際の劇場の照明が落ちるタイミングに合わせて映画館の照明が暗くなる等、本当にMETに足を踏み入れているような臨場感がありました。

 そして暗闇の中から、無限旋律の序曲が始まり、スクリーンには大型船のレーダーのようなものが映し出され、斬新な演出とワーグナーの音楽の世界に一気に惹き込まれて行きました。
 ・・・と言いたいところですが、残念ながら遅刻してくる人が後を絶たず、ドアの開閉音が響くわ、人が通る気配がするわで、少々出鼻を挫かれてしまいました。時間厳守は当然のルールとして、もう少し厳しくしてもいいかもしれませんが、映画館としては逆に遅れた人からクレームが来てしまうのでしょうか・・・。

 しばらくして館内も落ち着き、ワーグナーの世界に浸るべく集中します。海軍の軍艦に置き換えた場面設定は興味深く、映像を観ているだけで十分楽しめます。ワーグナーの作品は私も好きな方ではありますが、いかんせん「長い」「クドい」と言われるだけあって、入り込むまではちょっと難儀します。それでも第一幕のクライマックス、トリスタンとイゾルデが薬を飲む前後には目が離せなくなっていました。

 ここで改めて、この作品についてざっと紹介すると・・・
 騎士トリスタン(この演出だと海軍軍人っぽい描かれ方でした)はイゾルデの婚約者を殺した仇です。イゾルデは「あんたを殺して私も死ぬわ!(超意訳)」とばかりに一緒に毒薬を飲みますが、媚薬にすり替えられていて愛憎めくるめくドロドロ劇になり、結果救済としての死を迎えるという、ぶっちゃけるとそんな話です。
 その媚薬を飲んだ直後、互いに見つめ合う場面の緊張感が半端無く、背筋がぞくぞく来ました。そして第一幕終了。と思いきや、先ほどまで緊迫感あふれる歌唱と演技を披露していたトリスタンがにこやかにインタビューに応じ始るという落差(笑)。幕間の舞台転換中に歌手にインタビューすることも、このプランの売りになっているようです。インタビュー中、ハードな第2幕をどう乗り切るかと問われて「酒とクスリで乗り越える」との答えに、館内でも笑いが起きました。
 
 5時間もあるため、2回休憩を挟みます。その間もスクリーンでは緞帳の裏で大道具を運搬したりする姿がずっと映っていて飽きません。それにしても、舞台裏はこんなに大変なんだというのも改めて知ることが出来ました。また、「8時だヨ!」を思い出したりして(笑)アレも生中継でセットの解体や運搬やっていたので、相当大変だったと思います。

 第2幕の舞台は、回り続ける3つの換気扇という装置が印象的でした。第1幕の憎悪から打って変わって、媚薬の熱に浮かされて嬉々として歌いまくるイゾルデの姿が印象的で、これはCDで聴いたのではわからず、映像で見ないとその魅力が伝わり切らないと思います。
 寸止めで終わる「愛の死」や、マルケ王(この舞台だと海軍提督のように描かれています)の延々と続く独白などの見どころを経て、2度目の休憩と第3幕からラストの「愛の死」まで、結局5時間があっという間に感じられる程、充実した鑑賞を楽しめました。

 この「トリスタンとイゾルデ」は、「前奏曲と愛の死」という管弦楽曲向けアレンジで広く知られており、私もそこから知ったクチです。しかし改めて全曲を通して鑑賞すると、「前奏曲と愛の死」も演奏会用の作品として優れているとは思いますが、「忙しい人向けの15分でわかるトリスタンとイゾルデ」という感じがします。
 ワーグナーの作品は、ガルパン劇場版でまほお姉ちゃんが名前を出した「ニュルンベルクのマイスタージンガー」もこのくらいの上演時間を要し、「ニーベルングの指環」にいたっては4日に分けて計15~6時間はかかるとんでもない長さのため、全曲を聴くにはそれなりの準備と心構えが要りますが、久々にワーグナーの「毒」に嵌ってみたくなりました。

↓↓参考:「前奏曲と愛の死」はこんな曲です。

 この演奏だと、11:45くらいまでが「前奏曲」で、以降が「愛の死」です。

 このライブビューイングは既に10年やっているらしく、もっと早く知っていれば・・・と悔やまれます。次回はモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」とのこと。これはオペラ入門にも良い作品なので、これを機に足を踏み入れてみようという方にもお勧めです。
 オペラはクラシックのコンサート以上に敷居が高そう・・・という声も耳にしますが、私としては「考えるな、感じろ」でいいと思います。実際、ストーリーは粗筋だけ見るとどうでもいい話のものが多く、ざっと登場人物の人間関係と大まかな流れだけ予習して、あとは音楽と舞台に身を任せるだけで、絢爛豪華な「総合芸術」が楽しめます。
 実際の舞台は前述の通り私でもなかなか行く機会が無いため、このライブビューイングは入門にも最適だと思います。こうして稚拙ながら感動と興奮を少しでも伝えたいと思い、思わず記事にしてしまうほどですので、この世界を知らないのは勿体ないです!ぜひ、一歩踏み出してみて下さい。

 でも、こんなに素晴らしいものを見せられては、ニューヨークに行きたくなってしまいそうです。懐も寒い昨今、困ったものです・・・
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サンフランシスコ人

「日本で生の公演を観たくとも....」

サンフランシスコには、米国二大歌劇団のサンフランシスコ・オペラがあります...
by サンフランシスコ人 (2017-10-22 06:37) 

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